全てが見えてくる飛躍の法則-ビジネスは<三人称>で考える-
痛みをメタ認知し、相手の立場の目線を手に入れ、FPSで冷静になる
著者:石原 明
本の概要
あなたは仕事で、こんな問題をお持ちではないだろうか。
- 良い仕事をしようと自分なりに頑張るが、なぜか周りに認められず、頑張り損になる。
- 大小の決断をするときに、判断基準がなくて困る。
- 部下が、なかなか仕事のカンをわかってくれず、これ以上教え方がわからない。
もしあなたが、「人称」の概念を持っていれば、全部解決する。
「人称」とは、思考の範囲だと著者は述べる。
- 一人称なら、あなた自身の視点。他者の考えを踏まえない、自分の感情のみの目線だ。芸術家やスペシャリストなら仕事もくるかもしれない。
- 二人称なら、相手からの視点。相手がどう感じるかを考えて、相手から見た自分をイメージする。接客や営業なら当たり前に持っているべき視点。
- 三人称なら、あなたと相手、そして第三者の視点を考える。あなたの行動が、長期的にどういった影響を周囲に及ぼすか、といったところまで考える。マネージャーが必ず持っていなければならない視点だ。
あなたがもし、優秀なビジネスマンになりたいのなら、三人称を持つことで、上司や取引先の考えを読むことができ、結果を残していくだろう。
決断を行うときは、現在の自分よりも一つ上の人称で周囲を見ると、もう迷うことはない。
カンの悪い部下には、人称の概念を教えると、質の高い仕事をさせることが出来る。
そして、三人称を会得した後も、四人称、五人称・・・と、自分が持つ人称の数を上げていくことで、成長は加速していく。
ビジネスマンは自分の持っている人称の数を増やすことで、柔軟に置かれた状況に対処し、成功をつかみ取っていくだろう。
感想
「人称」と聞くと、一人称、FPS(ファースパーソンシューティング、CODやBFなんかのゲーム)が思う出される。そうではなく、ここでいう「人称」とは、いわゆる「メタ認知」のことだ。客観的な視点ともいう。FPSをプレイすると一番初めに忘れる言葉である。
著者の石原明氏はコンサルタントで、毎年100回以上の講演を行い、 本も他にいくつか執筆されている。
コンサルタントという仕事はとにかく客観的に顧客を把握することが多いので、人称という概念が生まれたそうだ。
客観的ではなかったこととして、昔バイトで、「相手の立場になって考えろ!」と、店長に怒られることがよくあった。怒られていなかった同期はすごくモテる奴だった。
個人的にはお客さんや店長の立場に立って、ちょ~~考えてたつもりだったが、人称という概念をもとに考えると、当時の僕は二人称、店長は三人称で働いていたのだな、と今思えばこそ。
この、店長的(マネジメント)な考えはマニュアル化しづらく、社会でもだいたいの人間が頭を抱えている。
そこで、マニュアルの代わりに「人称」という概念を持ち込むことで、マネージャーは、部下の二人称での仕事を理解し、三人称以上の視点を言語化して部下に伝える。
部下は自分の視野の狭さを知覚することで、成長スピードがアップする。
そうして、会社でハッピーな人が増える。増えたらいいな。かわいそうな労働者が減ったらいいな。
新卒では気づきにくいこととして、新卒は毎秒の行動が上司から監視されていることがある。後輩の中には、一挙手一投足がむかつくやつも、何をしてもかわいいやつもいるが、それはそうとして、著者によると、新人時代から三人称で物事を進められると、上のポストが勝手に用意されていくとのこと。ちゃんと上の考えを汲んで仕事ができる奴は偉いのだ。
別に仕事でなくても、自分は周りからどう見えているか、ちゃんと気にして立派な人間として立ち振る舞っていくうえで、人称という言葉は折に触れ思い出していきたい。
実際の仕事で活かす
僕は今、現在は翻訳会社でインターンを行っているが、翻訳作業でも人称を生かして仕事をすることで明らかに仕事のクオリティが変わった。
翻訳作業のフローは、だいたい以下の流れである。
1.フィリピン人スタッフ(原文から日本語)⇓
2.ぼく(日本語修正)⇓
3.ボス(校正)⇓
4.クライアント(確認・出稿)⇓
5.読者(たのしむ)
2.(日本語修正)を行う僕は、4.のクライアントの目、さらに5.の読者の目を考えて翻訳を行うことで、ボスから再修正を頂くことが少なくなった。
また、1.フィリピン人スタッフとのミス共有も格段に精度が上がり、なんだかマネージメント能力が上がった気がする。きもちがいい
今はまだ自分の作業に対してのみ人称を意識しているが、インターンとして、どういった役割が求められているか、人称を意識して、今一度考えてながら仕事をすると、もっと気持ちよくなれそうだ。
ヤツは己の痛みをメタ認知することによって、痛覚を遮断し、どんな攻撃にも耐えることが出来る!
ところで
僕がビビったのは、人称への認知を極めると、精神的、物理的な痛みすら乗り越えられると、著者が述べていた部分。
原理は、痛みに耐えている自分をメタ認知することによって、苦痛を感じている自分と、人称が高い自分を分けて考えることが出来るということ。
なんだかバトル漫画の解説役みたいになってしまったぞ。こういったことは、ほかの本だと「目標を持てば頑張れる」とか、「全てをありがたいこととして、受け止める」などの表現で繰り返されているが、メタ認知という心理学用語を使うことで、一気にバトル漫画感が増すと感じるのは、僕だけだろうか。